ここ数年、投機や投資というものに多少の興味を持ちはじめている。
確率論と戦術が支配する世界なので、ボクにとってはある種のゲームである。実際にやってみようという積極的な気持ちは弱い。
しかし「大家さんになって不労所得」とか「FXで高利回り」とかいった話を読んでいると、なんとなく経済のことが分かったような気がしてきて楽しい。
普通預金口座で寝かせている小銭を外貨MMFに回してみようとか、株主優待で良い物をくれる株を少し買ってみようかとか、なんかそんな気分をもて遊んでいる。
ただ、そんな中で首を傾げたのが株のデイトレーディング。
このシステムで素人が利益を出せるわけないと思うのだが、どうやらこいつに手を出す人が大勢いるようである。
ボクが勘違いしているだけかもしれないが、ディトレーディングというゲームの本質は以下の3点ではないか。
(1)ゲームの参加者どうしで金を奪い合う(ゼロサムゲーム)
(2)取引を頻繁に繰り返し、その度に手数料を証券会社に払う(胴元のいるギャンブル)
(3)損金は100%自己負担なのに利益の20%は税金として巻き上げられる(損益の不均衡)
(1)については青木雄二が『ナニワ金融道』でこんなことを書いていた。
「あのな灰原、素人が商品先物に手を出すいうのは、いわばボクシングの世界チャンピオンと試合するようなものやで。たとえ体重が同じランクやいうてお前が勝てると思うか?」
デイトレの世界にもこれはそのまま当てはまる。
かたや、豊富な経験と知識と資金とコネ(いわゆるインサイダー情報)を持つ専門家が時間を大量に消費して戦いに臨んでいるのに対し、もう一方は参考書を数冊読んだ未経験者が本業のあいまに携帯電話で取り引き。
WIN-WIN型のゲームならともかく、誰かが勝った分だけ他の誰かが負けるゼロサムゲームを長期間続けて、素人が勝ち越すなど考えられない。
(2)の手数料は一見すると些細なことだが、儲けを次のゲームに転がすタイプのゲームでは途方もない負荷になる。
仮に手数料が取引額の1%としても100回取り引きすれば資金の63%が証券会社に巻き上げられてしまう。
そして(3)の税金がこの資金減少を加速する。一回の取引で投資額の±2%の損益が発生すると見込むなら、平均して一回取引すると資金は初回の99.8%に減る。100回目の取引を終えた時点で資金の18%が国の懐に収まっている。手数料による減額と掛け合わせると、資金は開始時の30%しか残らない。
(2)(3)から計算すると、一回の取引毎に平均して+3%で利を食えれば損しないことになる。(損益の振幅による。振幅が大きいほど税金でかすめ取られる額が増える)
プロ相手に素人がゼロサムゲームを挑んで+3%平均で勝ち越す?ありえねー。ありえねー。ありえねー。
囲碁や将棋のように実力が強く影響するゲームでは弱い者は強い者に勝てない。また、ルーレットのようにほとんど運で決まるゲームでは実力があまり関係しない代わりに、長く続ければ勝率が期待値に収斂していき、経費(テラ銭と税金)分だけ着実に負ける。だからカジノやパチンコ店があれほど儲かるのだ。
デイトレが運頼みゲームだろうと、実力勝負のゲームだろうと、素人は必ず損する。それもすごい勢いで。
ここでミソなのが、(1)〜(3)の前提に基づくとデイトレ関係者が素人にデイトレを強く勧めてしまう構造になってしまうことだ。
デイトレで稼いでいるプロは、自分達の資金源になるカモ(鉄火場用語ではダンナ衆)がゲームに参加すればするほど儲かるのだから、いかにもデイトレが儲かりそうな話をしたり本を書いたりして素人を引き込もうとするだろう。
証券会社も中長期的な取引よりもデイトレを行ってくれた方が圧倒的に儲かる。「手数料は取引額の50%」などという投機に手を出す人間はいないが、デイトレでは思いっきりサービスした手数料を設定しても一年もたたずにそれ以上の金を巻き上げることができる。
さらに、政府も証券取引市場で金が動けば動くほど経済が活性化し、税金がなだれ込んでくる。
カモ以外の関係者全員がウハウハに得するのだから、なんとかして素人を引きずり込もうとしない方がどうかしている。
まあ、素人の投機など余剰金をまわしているのだから、それを吸い上げる過程で市場が活性化し、一部が税金になって国庫が潤うのであれば、外野がとやかく言うことではない。
投機関係のサイトなどを読みながらつらつらとこんな風なことを考えていたところ。巡回経路に入れていた
世捨て人の庵というサイトのサイト主がデイトレで生計を建てる旨の宣言をされた。
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世捨て人の株 資金700万円でデイトレを行って喰っていく予定だそうである。20%以上の利益を毎年叩き出す計算なのだろうか、たいへんな自信だ。
ボクのデイトレ認識が正しいとすれば半年もしないうちに大変なことになると思うのだが、さて?